2024 12 18
建設業法改正の主要ポイント解説:価格転嫁、ICT活用、技術者専任義務合理化の新ルール
令和6年12月13日に建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律(令和6年法律第49号)が一部施行されました。本記事では、改正法の中から重要なポイントをわかりやすく解説します。特に、小規模事業者を含む建設業者の皆様が実務に役立てられるよう、内容をまとめました。
目次
改正法の主なポイント
この改正法の目的は、建設業の効率化と労働者の保護を図り、業界全体の発展を促進することです。建設業法も令和6年12月13日に改正法が施行されておりますので、主な改正内容を説明します。
契約書の記載事項の追加
建設工事の契約書に「価格の変動や変更に基づく工事内容の変更または請負代金の変更、その額の算定方法に関する定め」を記載することが義務化されました(建設業法第19条第1項第8号)。この規定は契約内容の透明性を高め、トラブル防止につながる重要な変更です。
建設業法第19条(建設工事の請負契約の内容)
1 建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従つて、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。
一 工事内容
二 請負代金の額
三 工事着手の時期及び工事完成の時期
四 工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容
五 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
六 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
七 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
八 価格等(物価統制令(昭和二十一年勅令第百十八号)第二条に規定する価格等をいう。)の変動又は変更に基づく工事内容の変更又は請負代金の額の変更及びその額の算定方法に関する定め
九 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
十 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
十一 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
十二 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
十三 工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
十四 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
十五 契約に関する紛争の解決方法
十六 その他国土交通省令で定める事項2 請負契約の当事者は、請負契約の内容で前項に掲げる事項に該当するものを変更するときは、その変更の内容を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。
3 建設工事の請負契約の当事者は、前二項の規定による措置に代えて、政令で定めるところにより、当該契約の相手方の承諾を得て、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて、当該各項の規定による措置に準ずるものとして国土交通省令で定めるものを講ずることができる。この場合において、当該国土交通省令で定める措置を講じた者は、当該各項の規定による措置を講じたものとみなす。
赤字部分が改正箇所となります。
価格転嫁協議の円滑化に関するルール
契約代金や工期に影響を及ぼす可能性のある事象が発生した場合、建設業者は注文者に事前通知を行う義務があります。さらに、実際に事象が発生した際には、注文者は建設業者の契約変更の申し出に対して誠実に協議する努力義務が課されます。このルールは、取引の公平性を確保するための重要な措置です(建設業法第20条の2第2項から第4項まで、施行規則第13条の14及び第13条の15)。
建設業法第20条の2(工期等に影響を及ぼす事象に関する情報の通知等)
1 建設工事の注文者は、当該建設工事について、地盤の沈下その他の工期又は請負代金の額に影響を及ぼすものとして国土交通省令で定める事象が発生するおそれがあると認めるときは、請負契約を締結するまでに、国土交通省令で定めるところにより、建設業者に対して、その旨を当該事象の状況の把握のため必要な情報と併せて通知しなければならない。2 建設業者は、その請け負う建設工事について、主要な資材の供給の著しい減少、資材の価格の高騰その他の工期又は請負代金の額に影響を及ぼすものとして国土交通省令で定める事象が発生するおそれがあると認めるときは、請負契約を締結するまでに、国土交通省令で定めるところにより、注文者に対して、その旨を当該事象の状況の把握のため必要な情報と併せて通知しなければならない。
3 前項の規定による通知をした建設業者は、同項の請負契約の締結後、当該通知に係る同項に規定する事象が発生した場合には、注文者に対して、第十九条第一項第七号又は第八号の定めに従つた工期の変更、工事内容の変更又は請負代金の額の変更についての協議を申し出ることができる。
4 前項の協議の申出を受けた注文者は、当該申出が根拠を欠く場合その他正当な理由がある場合を除き、誠実に当該協議に応ずるよう努めなければならない。
赤字部分が改正箇所となります。建設業法施行規則第13条の14および第13条の15は、施行規則の該当箇所をご確認ください。
労働者の処遇改善に関する規定
建設業者は、雇用する労働者の知識や技能を公正に評価し、適正な賃金の支払いをはじめとした処遇改善に努めることが求められます。この取り組みは、建設業界での働きがいを向上させ、担い手確保につながるものです(建設業法第25条の27第2項)。
建設業法第25条の27(施工技術の確保に関する建設業者等の責務)
1 建設業者は、建設工事の担い手の育成及び確保その他の施工技術の確保に努めなければならない。2 建設業者は、その労働者が有する知識、技能その他の能力についての公正な評価に基づく適正な賃金の支払その他の労働者の適切な処遇を確保するための措置を効果的に実施するよう努めなければならない。
3 建設工事に従事する者は、建設工事を適正に実施するために必要な知識及び技術又は技能の向上に努めなければならない。
4 国土交通大臣は、前三項の規定による取組に資するため、必要に応じ、講習及び調査の実施、資料の提供その他の措置を講ずるものとする。
赤字部分が改正箇所となります。
ICTの活用促進
建設現場の効率化と生産性向上を目的として、ICT(情報通信技術)の活用が推奨されています。特定建設業者や公共工事の受注者には、ICTを活用した現場管理や下請負人への指導に努める努力義務が課されました。また、指針として「ICT活用ガイドライン」が公開されています(建設業法第25条の28、入契法第16条)。
建設業法第25条の28(建設工事の適正な施工の確保のために必要な措置)
1 特定建設業者は、工事の施工の管理に関する情報システムの整備その他の建設工事の適正な施工を確保するために必要な情報通信技術の活用に関し必要な措置を講ずるよう努めなければならない。2 発注者から直接建設工事を請け負つた特定建設業者は、当該建設工事の下請負人が、その下請負に係る建設工事の施工に関し、当該特定建設業者が講ずる前項に規定する措置の実施のために必要な措置を講ずることができることとなるよう、当該下請負人の指導に努めるものとする。
3 国土交通大臣は、前二項に規定する措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るための指針となるべき事項を定め、これを公表するものとする。
公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律第16条(公共工事の適正な施工の確保のために必要な措置)
公共工事についての建設業法第二十五条の二十八の規定の適用については、同条第一項及び第二項中「特定建設業者」とあるのは、「建設業者」とする。
監理技術者等の専任義務の合理化と営業所技術者等の職務特例
監理技術者等について、情報通信技術を活用して工事現場の状況確認が可能な場合、一定の条件下で複数現場の兼任が認められるようになりました。条件には以下が含まれます。
- 現場間の移動時間が概ね2時間以内
- 下請け回数が3次まで
- 必要な連絡体制と情報通信機器の設置 また、営業所技術者についても同様の条件下で兼任が可能です。この改正により、技術者の効率的な配置が期待されます。
監理技術者等:建設業法第26条第3項、施行規則第17条の2及び第17条の3
営業所技術者等:建設業法第26条の5、施行規則第17条の5及び第17条の6
建設業法第26条第3項
3 公共性のある施設若しくは工作物又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるものについては、前二項の規定により置かなければならない主任技術者又は監理技術者は、工事現場ごとに、専任の者でなければならない。ただし、次に掲げる主任技術者又は監理技術者については、この限りでない。一 当該建設工事が次のイからハまでに掲げる要件のいずれにも該当する場合における主任技術者又は監理技術者
イ 当該建設工事の請負代金の額が政令で定める金額未満となるものであること。
ロ 当該建設工事の工事現場間の移動時間又は連絡方法その他の当該工事現場の施工体制の確保のために必要な事項に関し国土交通省令で定める要件に適合するものであること。
ハ 主任技術者又は監理技術者が当該建設工事の工事現場の状況の確認その他の当該工事現場に係る第二十六条の四第一項に規定する職務を情報通信技術を利用する方法により行うため必要な措置として国土交通省令で定めるものが講じられるものであること。二 当該建設工事の工事現場に、当該監理技術者の行うべき第二十六条の四第一項に規定する職務を補佐する者として、当該建設工事に関し第十五条第二号イ、ロ又はハに該当する者に準ずる者として政令で定める者を専任で置く場合における監理技術者
建設業法第26条の5(営業所技術者等に関する主任技術者又は監理技術者の職務の特例)
1 建設業者は、第二十六条第三項本文に規定する建設工事が次の各号に掲げる要件のいずれにも該当する場合には、第七条(第二号に係る部分に限る。)又は第十五条(第二号に係る部分に限る。)及び同項本文の規定にかかわらず、その営業所の営業所技術者又は特定営業所技術者について、営業所技術者にあつては第二十六条第一項の規定により当該工事現場に置かなければならない主任技術者の職務を、特定営業所技術者にあつては当該主任技術者又は同条第二項の規定により当該工事現場に置かなければならない監理技術者の職務を兼ねて行わせることができる。
一 当該営業所において締結した請負契約に係る建設工事であること。
二 当該建設工事の請負代金の額が政令で定める金額未満となるものであること。
三 当該営業所と当該建設工事の工事現場との間の移動時間又は連絡方法その他の当該営業所の業務体制及び当該工事現場の施工体制の確保のために必要な事項に関し国土交通省令で定める要件に適合するものであること。
四 営業所技術者又は特定営業所技術者が当該営業所及び当該建設工事の工事現場の状況の確認その他の当該営業所における建設工事の請負契約の締結及び履行の業務に関する技術上の管理に係る職務並びに当該工事現場に係る前条第一項に規定する職務(次項において「営業所職務等」という。)を情報通信技術を利用する方法により行うため必要な措置として国土交通省令で定めるものが講じられるものであること。2 前項の規定は、同項の工事現場の数が、営業所技術者又は特定営業所技術者が当該工事現場に係る主任技術者又は監理技術者の職務を兼ねて行つたとしても営業所職務等の適切な遂行に支障を生ずるおそれがないものとして政令で定める数を超えるときは、適用しない。
3 第一項の規定により監理技術者の職務を兼ねて行う特定営業所技術者は、第二十七条の十八第一項の規定による監理技術者資格者証の交付を受けている者であつて、第二十六条第五項の講習を受講したものでなければならない。
4 前項の特定営業所技術者は、発注者から請求があつたときは、監理技術者資格者証を提示しなければならない。
公共工事における施工体制台帳の提出義務の合理化
公共工事の受注者が、発注者に対してICTを利用して施工体制を確認できる措置(建設キャリアアップシステムの利用など)を講じた場合、施工体制台帳の写しの提出が不要となりました。これにより、手続きの簡略化が図られています(入契法第15条第2項、入契法施行規則第2条)。
公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律第15条第2項(施工体制台帳の作成及び提出等)
2 公共工事の受注者(前項の規定により読み替えて適用される建設業法第二十四条の八第一項の規定により同項に規定する施工体制台帳(以下「施工体制台帳」という。)を作成しなければならないこととされているものに限る。)は、当該公共工事に関する工事現場の施工体制を発注者が情報通信技術を利用する方法により確認することができる措置として国土交通省令で定めるものを講じている場合を除き、作成した施工体制台帳(同項の規定により記載すべきものとされた事項に変更が生じたことに伴い新たに作成されたものを含む。)の写しを発注者に提出しなければならない。この場合においては、同条第三項の規定は、適用しない。公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律施行規則(国土交通省例第105号、令和6年12月12日)第2条(施工体制を発注者が情報通信技術を利用する方法により確認することができる措置 )
法第十五条第二項の国土交通省令で定める措置は、建設キャリアアップシステムその他適切なシステムを利用する方法により、発注者が同項に規定する施工体制台帳の記載事項を確認することができるようにする措置とする。
まとめ
今回の改正法は、建設業の現場効率化と労働環境の改善を目指した重要な内容が盛り込まれています。特に、中小規模の建設業者の皆様にとっても実務に活かせる改正となっています。最新のガイドラインや詳細情報については、国土交通省の公式サイトをご確認ください。
引き続き、建設業の発展に向けた情報を発信してまいりますので、ご期待ください。
※ブログの内容等に関する質問は一切受け付けておりませんのでご留意ください。
※本サイトの情報を利用した結果生じた損害について、当事務所は一切の責任を負いかねます。また、無断転載を禁止します。
利用規約
「うちも許可取れる?」
まずは無料で電話診断!
許可取得でお悩みの建設業者様はお電話ください、
行政書士が無料でしっかり診断します。
「建設業許可のHPを見た」とお伝えください。
TEL
048-797-9846(判断が難しいケースは、しっかり
行政確認を行なった上で回答します。)
受付時間(平日 9:00~17:00)
運営国際行政書士鈴木事務所